アガリクス Agaricus

1.はじめに

アガリクスは、「ハラタケ科」のキノコで、学名がアガリクス・ブラゼイ・ムリル (Agaricus Blazel Murrill)の通称としてアガリクスと呼ばれています。
原産地はブラジルのピエダーデ地方のキノコとして知られ、古くから南米の先住民から「太陽の茸」とも呼ばれ、日本ではヒメマツタケやカワリハラタケとも呼ばれていいます。
アガリクスは、当初1944年にブラゼイ氏(R.W.Blazei)が米国フロリダ州のゲンイズビルで発見しており、1945年にムリル氏(W.A.Murrill)によりアガリクス・ブラゼイ・ムリルと命名されています。
ブラジルでは、当時ブラジル開拓移民でキノコ研究家であった古本孝寿氏(1917年~1988年)のピエダーデ産のアガリクスの研究から「ピエダーデ茸」と呼ばれており、その菌株がアルゼンチンのブエノスアイレス大学と日本の三重大学にも送られ紹介されています。
その後1967年にハイネマ氏(Heinema et Cros)により、この古本氏のピエダーデ茸が正式にアガリクス・ブラゼイ・ムリルと確認されたことから、アガリクスはブラジル・ピエダーデ産のキノコを指すようになりました。
アガリクスは、人口栽培の大変難しいキノコでしたが、1975年人工栽培が可能となり、1978年には大量生産が可能となっています。
米国のマッシュルーム栽培会社のシルバン社による人工栽培や日本の協和発酵による菌子体培養が知られています。

2.アガリクスの成分

アガリクスの成分としては、子実体(キノコ状)に糖鎖成分であるβ-(1→3)Dグルカン、β-(1→6)Dグルカン、α-グルカン、β-ガラクトグリカン、核酸(RNA)、ペクチドグルカン、キシログルカンなどが含まれ、菌子体には多糖類が豊富に含まれています。

3.アガリクスの研究

キノコには共通してがんに有効な成分が含まれており、レンチナン、クレスチン、ソニフィランは抗がん剤として医療現場でも使用されてきました。
1960年代初め米国のペンシルベニア州立大学のシンデン博士(W.J. Sinden)とランバート研究所のランバート博士(E.D. Lambert)が、ブラジル・サンパウロの郊外のピエダーデ山地で暮らす住民たちに成人病が大変少なく健康で長寿であったことに着目し、生活全体を検証したところ好んで食していたアガリクスの存在を発見して米国での研究を始めました。
1980年東京大学医学部と国立がんセンターでは、アガリクス、霊芝、マイタケ、シイタケ、ナメコ、エノキダケなど15種類のキノコについて、マウスの復水がん抑制実験をおこなっています。
復水がんを定着させたマウスに、各キノコのエキスを10日間与え、4~5週間放置しマウスの状態を確認したところ、他のキノコに比べアガリクスが最も良い結果となりました。
アガリクスのβ-グルカン類は、免疫細胞を刺激し、活性化させるサイトカインの産出と放出を促しました。
1981年第54回日本薬理学会(1983年第56回、1984年第57回)や1985年第44回日本癌学会総会で、アガリクスの抗腫瘍効果が発表されています。
1982年には、岩出菌学研究所所長の岩出亥之助博士は、日本菌学会会誌『日菌報』において、「ヒメマツタケについて」と題した論文を発表しています。
その後、キリンウェルフーズ社のアガリクス製品が発がん性があるとして安全性問題が起こったことを契機に、市場にはアガリクスに対する風評被害が蔓延しました。
2006年アガリクスの協議会が設立、安全性ガイドラインが制定され、安全性追求への努力が続けられ、厚労相の安全宣言に繋がっています。

4.アガリクスの含有成分

含有成分

ビタミン、ミネラル、核酸、アミノ酸、酵素、蛋白、糖質、繊維、灰分、脂肪、エゴステロール

有効成分

β-(1→3)Dグルカン、β-(1→6)Dグルカン蛋白複合体、ヘテログルカン、キシログルカン

5.アガリクスの作用

アガリクスの作用として、免疫賦活作用が知られていますが、β-グルカンは分子量が50万の高分子ため、人の消化酵素では分解されず、高分子のβ-(1→3)Dグルカンは、小腸の粘膜に着くと白血球が異物と認識し、免疫が活性化すると考えられています。

6.アガリクスの特徴

アガリクスについては、米国FDA(医薬品食品規制庁)のPDR(米国医師用卓上参考書)に収載されています。
米国内の医家向け医薬品について、添付文書情報を詳細に編集した書籍(年鑑)です。
略称の PDR で通っており、汎用処方箋薬の適応、効能効果、用法用量、禁忌、副作用情報、薬理作用、構造式などの医薬情報が収録されています。
日本での「日本医薬品集」や「JAPIC医療用医薬品集」に相当する書籍とされます。

7.おわりに

アガリクスは大変デリケートなキノコとして知られ、以前は原則的に現地ブラジルの自生地のみでしか入手することができませんでした。
人工栽培に成功するまでほぼ10年の年月がかかり、その後、量産技術が確立されたのは更に遅れて1978年のことでした。
それまでは、年間10tほどの出荷量の大半が米国で消費されていたため、日本で薬理的な研究が深まることはありませんでした。
しかし、人工栽培技術の確立から30余年の歳月が流れ、アガリクス製品はごく普通に入手できるようになり、また学術研究の深まりから今後においてより大きな期待を寄せられる素材となることを感じています。

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